民話 > ハチと夢(今井)
「ハチと夢」
 むかし、むかしのことでした。
村の若いしゅうが二人、春さきのあたたかい日に山へたきぎをとりに行ったとね。
 一しごと終わって昼めしを食べてしまうと、

「ああ、ぽかぽかあったかあて、ええ気持ちじゃ、はらもいっぱいだし、ねむたくなったわい。」

 一人の若いしゅうはでっかいあくびをして、ごろりと横になりすぐ〝ぐうぐう〟いびきをかいてねてしまったちゃんね。  
すると、ねむっている男の左のはなのあなから〝ブーン〟とハチがとび出ていったってね。ねむらんかった男は

「おやぁ、おかしなこともあるもんだわい。」

と思って、みていたとさ。
 そしたら、そのハチは白いつばきの花んとこへとんでゆき、みつをすうようなかっこうで、しばらくつばきの花にとまっていたとね。
少しするとハチはまたブーンととび立ち、ねむっとる男の右のはなのあなへ入っていったとさ。

「ああ、ええ気分でねておったわい」

男は目をさまして、でっかいあくびをしながらいった。

「おら今、おもしょい夢を見とった。白いつばきの花がさいておって、その木の下に金のかめがうまっとる夢だった。」
「そりゃええ夢じゃったのう。」

ねむらんかった若い男はうなずいたとさ。
そしてもしかしたら〝本当のこと〟かもしれんと心の中で思ったとさ。

 次の日、ねむらんかった男は、朝早ように山へでかけて行ったとね。
そしてハチがとまった白いつばきの木の下をほってみると、どんだけもほらんうちにかめが三つもでてきたちゃんね。
中をあけると、見るもまばゆい金の小判がザクザク入っておったとね。
 男はうれしゅうなって、こっそり家へ運んだ。
そして村一番の大金持になったとね。
そんだすけ、いい夢は人にいうもんじゃないんだとさ。
 
いちごさかえ申した。  

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