民話 > 原山の地蔵(糸静線・塩の道(北部))
「原山の地蔵」
 むかし、むかしのことでした。ある日旅人が主人からあずかった大切なお金をなくしてしまい、どうしようかとこまりはてて、原山の地蔵様の前を通りかかったちゃん。

「このまんま主人の家へ帰ることもできん。」

 旅人は、しずかに座しておられる地蔵様の前にすわって手を合わせた。

「お地蔵様。わたしゃ主人の大切なお金をばなくしてしまいました。ここで首をくくって死にます。」

 と旅人が首をくくろうとせをのばしたその時、

「死ぬのは早い。よーくそこいらをさがしてみろ。」

石の地蔵様がしずかな声でいうたっちゃん。
 旅人はびっくりして、お地蔵様のことば通り、あたりをさがしはじめました。
 この時、お地蔵様の後ろにそっとひそんでいたわるものが、この旅人のにもつを持って立ち上り、

「地蔵様、わしがぬすんだといわっしゃるな。」

といって、そうっとにげようとしたっちゃん。すると地蔵は、

「わしはいわんけんども、お前さんこそいわっしゃるな。」

としずかな声でこたえたってね。
 この声を聞くと、わるものはおそろしゅうなって、さっきぬすんだ大金も、にもつもみーんななげ出して、にげて行ってしまったんだってさ。
 しばらくして旅人は地蔵様の前にもどり、ほおり出されて金のつつみを見つけて、地蔵様に手を合わせ、

「お…お地蔵様ありがとうございました。」

ってないてよろんだんだって。
 石の地蔵様は、旅人のよろこんでいるすがたを見て、にっこりとうなづいたそうな。
 
いちごさかえ申した。  

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