民話 > 金時のぶらんこ (栂海新道)
「金時のぶらんこ」
 昔、昔のことじゃった。
 上路にそれはでっかい体の山姥が住んでおった。
 山姥には金時という、きかん気の子供がおったとさ。
 山姥は金時がかわゆぅてならんかった。

「これ金時やここへ来いや」

と日なたぼっこ石に呼んで、

「ここにねろや」

 と言ってひざを枕にして金時をねかせ、あたたかい日ざしにうつらうつらしながら、金時の頭の毛についた、しらみやのみを取ってたったとさ。
 金時は上路の野っ原や山をかけまわり、それは元気に遊んでおった。
 山姥が小高い原っぱにいると、金時がやって来て、

「おっかちゃん、このツルで遊ぶと面白いよ」

 といいながら大木にからみついた藤ヅルをつかんで、横の木にとびうっつてみせたとさ。

「うーん。そうかい」

 とうなずいた山姥は、藤ヅルの先を木の枝にからめて、ブランコを作ってやったとさ。

「さあ金時や。ブランコを作ってやったそい、のってみるがええ」

金時はうなずくと、早速藤ヅルのブランコにのり勢いよくこぎ出したとさ。

「うわーい。いい気持ちじゃ。遠くまで見えるぞぉ」

 金時は喜んで毎日ブランコにのって遊んだとさ。
 ある時山姥は、力持ちの金時に、

「ほーれ。これも面白いぞ」

 と言って石をほうりあげ、お手玉をしてみせたとさ。
 村の衆は、藤ヅルのブランコや石のお手玉で遊ぶ金時を見て、

「金時はブランコもお手玉も上手じゃわい。それにしてもあのブランコ、ようできとるのう」

 と感心したそうな。
 山姥が金時に作ってやったブランコやお手玉石、日向ぼっこ石は今も上路に残っていて、村の衆は山姥や金時のことを時々、思い出しているそうな。

いちごさかえ申した。  

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