舞

根知山寺の延年 おててこ舞

  舞楽が奉納される日吉神社は、山寺集落の南東に位置し、大山咋命(おおやまくいのかみ)を祭神としています。 この神社は、古くから山王社あるいは山王さんと呼ばれ根知谷の村社として人々の信仰を集め、 神社の祭礼や管理のうち、舞楽に関わる部分を山寺集落が代々受け継いでいます。
 
  おててこ舞は根知地区山寺集落で古来から保存・伝承されている「根知山寺の延年」のことをいい、舞の中の有名な舞楽「おててこ舞」が一般に祭りの総称として知られ、 広く親しまれています。
  毎年9月1日の秋季大祭の日に奉納され、神仏習合を色濃く残す県内唯一の延年芸能です。 延年とは「遐令延年(かれいえんねん)」という言葉に由来するといわれ、「遐令」とは「長寿」を意味し、「芸能によって心を和らげることが寿福増長につながる」という思想があります。 「延年」とは奈良や京都の寺院で法会の後に行われた余興の歌舞遊宴の芸能を指します。
  この山寺の延年は、風流(初期の歌舞伎踊)と稚児舞楽を中心に神楽・万才・獅子舞の類が加えられた計10曲で構成されています。舞の由来や起源は明らかではありませんが、 歌詞の中に室町小歌に見られるような言葉や使い方があって、京都の流れを汲み、400〜500年前から伝わるものと考えられています。
 
  舞は毎年9月1日の日吉神社の祭礼に奉納され、前日8月31日の夜には宵宮として9曲が奉納されます。
 昭和55年1月28日に国の重要無形民俗文化財に指定されています。  
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宵宮

  • おててこ舞
  • 狂いの舞
  • 鏡の舞

  8月31日の夜の「宵宮」では、9曲の神楽が奉納されます。その昔、神主によって舞われていた舞で、いつからか村人が舞うようになり、宵祭りに奉納するようになったといわれています。
  舞は「あくま祓い」「さんばの舞」「とびらの舞」「てんとの舞」「狩護」「魔法切り」「えまき」「盆の舞」「鯛釣り舞」の順に奉納されます。「てんとの舞」は9曲中唯一の稚児舞楽です。 暗い境内にぼんやりと照らしだされる舞台で舞われる神楽は、大変幻想的です。

演目

  • おててこ舞
    1:おててこ舞(大人四人・稚児四人)
    「露の踊」「若衆踊」「扇車」「四節踊」「三国踊」「百六」の六つの舞いから構成されており、いずれも風流踊でそれぞれに歌詞があります。 扇を閉じたままで踊るものと、扇を開いてやや華やかに踊るものに大別され、稚児の背中に大きな「のし」をつけて踊るのが特徴的です。
  • 狂いの舞
    2:狂いの舞(稚児二人)
    露払いの舞で、日吉神社の舞台上で一回、その前に行道で二回、計三回舞います。
  • 鏡の舞
    3:鏡の舞(稚児二人)
    山寺集落で延年への最初の参加資格を与えられる舞です。四〜五歳くらいの稚児が、手に和鏡を持って舞います。最後に華(スイカやおもちゃ等)が 舞台に投げ入れられるのもこの舞のみどころです。

  • 花の舞
    4:花の舞(稚児二人)
    真っ赤な装束で頭に花天冠を被り、手には花のついた銅製のお盆を持って舞います。舞の途中でお盆から切り紙(花)をまくところがあり、華やかな舞です。
  • 弓の舞
    5:弓の舞(稚児二人)
    装束は狩衣に紫色のたっつけ袴で、右手には弓、左手には鈴を持って舞う比較的動きが早い舞です。舞台への出では左手に矢を持ちますが、途中で稚児の番子によって弓に取り替えられます。
  • 鉾の舞
    6:鉾の舞(稚児四人)
    非常に優雅な舞です。花道で番子から鉾を受け取り舞台へ登場し、終わる時は再び番子へ鉾を渡して退場します。

  • 種蒔き
    7:種蒔き(大人二人)
    神楽系の舞の一つです。男姿の「とっつぁ」と女姿の「かかさ」の二人が、作物がたくさん実るよう願いを込めて、「種蒔き」という農作業を真似て面白可笑しく演じる芸能です。
  • しめの舞
    8:しめの舞(大人一人)
    出雲の流れを汲むと思われる神楽の一つ。小さな丸しめ縄を持って舞うことが由来です。素戔嗚尊(すさのおのみこと)の剛健・凶暴性を表現したものと考えられ、 かなり激しい舞です。最後に手に持っている丸しめ縄を舞台中央に叩きつけて退場します。
  • 万才の舞
    9:万才の舞(大人二人)
    地元では「万才(まんざい)の舞」と呼びますが、まさに万才です。太夫が江戸の名所をうたえば、才蔵がこれをからかうという趣向で、加賀万才の「江戸名所」にも似ています。

  • 獅子舞
  • 10:獅子舞(大人一人)

    獅子頭はライオン系、いわゆる伎楽(日本最初の外来楽舞)の流れを汲む「獅子神楽」です。主役にからむ役として才蔵ががつきます。 獅子と才蔵の絡み合いは、根知山寺の延年の独創であると思われ、この舞の見どころの一つとなっています。